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チルソクの夏 2003/6/5

ブチ 会いたい


 1977−78年の山口県下関を主舞台とした、日本人と韓国人の淡い恥ずかしい(みもだえするほどに)恋を描いてます。姉妹都市の釜山と下関は交流のため陸上大会開いててそこで2人はであって、翌年にまたこの大会で会うことを誓うのです。まあ、時代も時代だし、メールとかもないしまさに織り姫彦星状態。「まさに」って今言いましたけど、チルソクって韓国語で七夕って意味なんですね。そしてその交流の陸上大会の時期が毎年その頃なんです。そしてそれ以降いろんな事情で二度と会えなかったふたりが、2003年、26年後になりますけれども、ついに再会するという、言ってしまえばそれだけの映画ですね。

 1977年頃って、時代も時代だからして、日韓おたがいにまだ偏見があるわけです。それは特に大人にあるわけなんですけど、「チョウセン」とか「日本兵」とか、まあそんな戦争の傷跡ですよね。それでただでさえ会えない恋人同士(手も繋いでないけど)は手紙のやりとりさえ禁じられる始末。まあ、このへんの国家だったり民族間のあれこれは、映画にとって確かに重要なテーマなんでしょうが、終盤、釜山の彦星クンにセリフで一気に語らしたのはちょっとどうですかねアレは。ドラマで、演出で見せてた他のシーンから比べるとちょっと浮いてた気がします。また、親たちの偏見の原因ももう少ししっかり描いても良かったですね。頑なに「つきあうのが駄目だ」と言われても意味わかりませんよね。これが小学校の授業中に見るようなNHKの教育番組なら「なぜお互いに拒絶しあってるのでしょう?」という授業へつながるんでしょうけど。


 なんてそんなことは些細なことでありまして、この映画はとてもあたたかくうれしく幸せな映画です。主人公ら女の子4人組の挙動とかみてて思わず顔がほころびます。ふつうに更衣室のシーンなんかもあって嬉しかったりするんですけど、そこもまた実際こんな感じだよねと、微笑ましいです。いや見たこと無いですけどね。無いですけどね。
 陸上競技のシーンも、というかすべてのシーンがそうなんですが、躍動感に満ちハリがありみずみずしく、そうですね、青春なんです。ブルマです。


 脇役もちょっと渋く、特に主人公・郁子の父は山本譲二さんなんですけど、これがもうハマり役ですね。ちなみにこのお父さんが職業「ながし」でして、さすがに1970年代も後半で一家の大黒柱がそんな職業では生活が苦しいわけです。だから郁子も新聞配達のアルバイトをしてます。それでその配達のシーンがたくさん、というかくどいほど出てくるわけですが、このシーンがまた効果的ですね。季節のうつりかわりで時間の経過をあらわしますし、生活感・・・というとちょっと印象違いますが、日々を生きてる感、これも変ですが、を感じます。郁子は漫然と生活してるのでなく一歩一歩考えながら踏みしめながら日々生活している感じというか、厚みを出してます、映画に。
 そういえば1970年代とはいいながら、あまり古臭い感じはしません。もちろん昭和な雰囲気はあるし化粧だって服装だって時代に準じているんです。でも古臭くはないんですね。これは親近感わくように70年代に平成の感覚とりいれて表現してるからなのか、逆に平成の今が70年代テイスト含んでるからなのか、それはよくわかんないいんですが、この違和感のなさが感情移入度増しています。
 エンディングも、そういう出会いのきっかけじゃなけりゃあいいなあ(ベタすぎだから)と思った方向性そのままだったんですが、それは方向性だけで、実際の出会うとこはちょっとヒネリはいってたので、グッと来ました。というか会う前に終わったと言っても良いか。よくわかんないでしょうけど、まあ良いか。


 舞台が下関ということで、まあ、そのぶんの思い入れというのが若干無いとは言いません。鑑賞した映画館から見える地域が舞台ですから。ほぼ地元ですもん私。それにこんな田舎がスクリーンに出るのは、大阪東京や福岡が出るのと違う。だから思い入れが無いとは、感動3割増しとは言いませんけど、夏には全国公開するそうで、騙されたと思ってぜひご覧頂きたい。今回は騙されませんよ。あ、今回もか。いやホントに。

 4人の少女のバランスが素晴らしい。音楽も僕にしみこむ。節度ある映画ですね。こういう映画があるから、日本映画はすてたもんじゃないなと思えます。

 しかしノスタルジーに浸ってたのかどうなのか、映画観ながら泣いてたおばちゃん多かったなあ。 



映画公式HP:http://www.prenomh.com/

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