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シービスケット (SEABISCUIT) 2004/1/29

一度や二度のつまずきは、誰にでもある

 1910年サンフランシスコに移住し、やがて自動車ディーラーとして大成功したものの、息子を自動車事故で息子を亡くしやる気もなくし、妻にも愛想を尽かされた男チャールズ・ハワード(ジェフ・ブリッジス)。同じ頃カナダの裕福な家庭で育っていたが1929年の世界恐慌で一家離散、草競馬でなんとか身を立てるも生活は厳しく、生活費を稼ぐための賭けボクシングのせいで失明したうえに騎手としては大柄に成長したジョニー・ポラード(トビー・マグワイア)。古き良き時代のカウボーイで、つまりは自動車時代のいまや時代遅れの男トムス・ミス(クリス・クーパー)。このどうしようもない3人が、これまた血統だけはいいけど体は小さいく、走れば手抜きの馬シービスケットと出会い快進撃、時代を熱くする話。


 運命がいちいちできすぎの展開でして、ご都合主義にしてももうちょっとやりようがあるだろう。とか思ったら実話だったんですね、これ。それ聞くとなにもかも深いなあと感動的に見えてくるよ。いい加減。

 登場人物ひとりひとりの人間を追うと、それぞれの実話エピソードが濃すぎてキリがないので、むしろその時代、群像を描いたという感じがしますね。なんで個々の話は短く場面がどんどん切り替わります。ある意味テンポがいい。あとわりかし投げっぱなしのエピソードとか目立つんです。でもほら実話だし、人生そんな決着がつく事柄ばかりじゃないですよね。観てるほうとしてはもやもやしますけど。ジョニーの家族はどうなったん? あの別れ方だし気になる。

 細かいことはさておいて、最初に述べたように熱いストーリーなんですよね。ロマンです。競馬というだけでもロマンなのに、日陰の男たちが運命に引き寄せられ目に輝きを取り戻し時代までをも引っ張っていくというさらなるロマンロマンロストマン。(失うな) 目が見えない騎手ってなんとなく「風のシルフィード」、あれは目が見えないのは馬だったけども、を思い出して個人的にますます熱い。さらにビスケットなんか強い馬相手じゃないと本気ださないなんて、思いっきりキュート号じゃないですか。これも「シルフィード」ですけど。「シルフィード」良かったな。競馬マン第一党「風のシルフィード」。作者は本島幸久。それで?

 それで、それだけ熱いってことです「ビスケット」が。「シル」並に。
 ジョニーはあるとき2度と騎手に戻れない致命的なけがをします。しかしかわりにビスケットに騎乗するのがライバル、ジョージ・ウルフ(ゲイリー・スティーヴンス)。通称アイスマンと呼ばれる熱い男(ホットマン)です。でもまだ問題は続く。今度はビスケットが骨折します。さあ、ここまできたらもう残された道は一つですよね。大レースでジョニー&ビスケット、ともに復活しかない! でもそんなことできるのか!? ということです。できるんですけど。あたりまえだ。そうでなくちゃ許せません。

 熱さを演出する、彼らの生き様以外のもうひとつの要素はカメラワークです。特に競馬シーン。足下からなめたり、併走したり、向かってきたりいろいろなんですけど、騎手視点ってのが熱いです。そして美しい。感情移入度が並じゃないですね。テクモの「ギャロップレーサー」視点と言えばわかる人にはわかるでしょうか。ほとんどの方がわからないと思います。


 映画の舞台となった時代を少しお話ししますと、1920年は悪名高き禁酒法が施行された年です。またアメリカではラジオ放送が始まった年でもあります。それで1929年は世界恐慌ですよね。1933年には禁酒法が廃止。あとドイツでヒトラーが政権をとり、日本が国際連盟を脱退した年でもあります。やがて1939年にドイツがポーランド侵攻、第二次世界大戦に突入するのはみなさんご承知の通りです。
 禁酒法といえば、つまりアル・カポネに代表されるマフィアの時代、そして世界恐慌、とにかく暗い時代なわけですね。世界的にもヒトラー政権成立など暗い方向なわけです。でもアメリカが戦争で出兵するのは1940年ですかね、だから第二次大戦以降なわけで1930年代まではまだ直接的な影響は出ていない時期です。ですよね? 知らないけど。というわけで人々も生活の中で夢を見る余裕がまだあるわけですよ。だからといって脳天気に明るい時代じゃなく、やはり暗い影の落とす時代。だからこそビスケットや周囲の人々の熱いエピソードが、すでに普及していたラジオの力もあって一気に広まったと思うんですね。


 アメリカン・ドリーム。単にお金持ちになることでなくロマンの体現者となること。「シービスケット」はそんなイメージのままのアメリカン・ドリームを表した映画です。もちろん本当の、現実のビスケットたちの生き様は映画そのままではなく、もう少し暗く散文的なものです。けれど彼らは確かに不撓不屈でした。この映画は本国アメリカでも好評のようです。テロや戦争や不況の、過去の痛手と将来の不安をかかえた今のアメリカにとって、1930年代の不安はリアルで、だからこそビスケットたちの折れない心に感動したのでしょう。


 たまにはまじめに終わります。


アメリカでは日本より受けそう。


古き良き時代を感じるシーンが満載です、メイビー。(キムタク)


ビスケット(馬)の個性があまり感じられなかったのが残念。


調教師トム役クリス・クーパー。渋い。「アメリカン・ビューティー」で有名。観てないけど。


馬主ハワード(ジェフ・ブリッジス)。誰がなんと言おうと主人公。


レースシーンはほんとうに美しい!


ウィリアム・H・メイシーはラジオ・アナウンサー役。本文では触れてないけど物語の味付けに欠かせない役。


実は本物の現役騎手ゲイリー・スティーヴンス。アイスマンとして抜群の演技力を披露。


あとトビー・マグワイアはたまに香取慎吾に見える。口元とか。


おまけ。ギャロップレーサー。


公式サイト:http://www.seabiscuit.jp/

シービスケット
cd:サントラ「シービスケット」
book:ローラ・ヒレンブランド
    「シービスケット―あるアメリカ競走馬の伝説」(原作)

book:「シービスケット(映画シナリオ)」

book:本島幸久「風のシルフィード」1巻(愛蔵版)
amazon.co.jp
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