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解夏(げげ) 2004/1/22

あなたが、失明するとしたら
最後に見たいものは何ですか

 ベーチェット病、聞き慣れない名前ですが要するに次第に目が見えなくなる病気です、に冒された主人公・隆之(大沢たかお)の、闘病記。闘病? ちょっとニュアンス違うか。いいや。

 次第に見えなくなるという猶予期間がポイントでして、そこで家族(特に母親)や恋人と、触れあったり八つ当たりしたり悩んだり、絡みが生きるわけです。原作はさだまさしということで、お涙頂戴度といいますか登場人物いい人度は天井知らず。ちなみにお涙度じゃなくお涙「頂戴」度ってのがポイントなんですけど、まあいいか。
 物語は予定調和。おそらく鑑賞者の想像の範囲を超えることはないでしょう。また、各レビューで言われてるように舞台となってる長崎の街並みが美しい。とは私は思いませんでした。いえ美しいんですけど特筆するほどかなと。でもこれは私が長崎の風景に馴染みがあるからでしょうね。慣れすぎてるっていうアレ。

 恋人・陽子役は石田ゆり子。陽子と隆之には紆余曲折風味のやりとりはないこともないですけど、まあハラハラすることはないです。というかなんか優等生ぶりが鼻につくというか、ふたり登場シーンのバカップルぶりが殴ってしまおうかと思わなくもないですが、でも恋人同士って端から見れば誰の場合もあんなもんでしょ。フン。ちなみに石田ゆり子が雨に濡れるシーンはすごい透けてます。マニア必見だと思われ。


 私の死んだ祖父も後天的な盲目でした。だから盲目ってわりかし身近で、私も自分の目が見えなくなるという想像をよくしたものです。祖父の盲目を苦と見せない日常を目の当たりにしながらも、目が見えなくなるというのはやはり恐ろしかった。からだの一部で何を失うのがもっとも恐ろしいかって、手、足、口、耳、鼻…やっぱり私は目です。私は絵が大好きで、だから必要以上に恐がってるのかもしれません。絵は観るのも好きだけど描くのはもっと好きで、手が無くなっても足で、足がないなら口で描けばいい。でも見えないと描けない。恐い。そりゃ手足もどれも失いたくないですけど。もちろん単なる想像なんで実際はわからないし、盲目の画家だって確かにいます。目が見える者の傲慢な発言を私は今してるのかな。

 映画の中で印象的な台詞がふたつありました。パーチェット病に冒されすでに盲目となった黒田(榎本明)という男の台詞です。
 「視力がなくなって困ったことはたったひとつだけ、歯ブラシの上に歯磨き粉がのらない」 リアルです。そしてもうひとつ。「視力を失うということは、乳白色の霧の中にいると思ったらいい。真っ暗闇じゃないんだ。私たちは今まで暗闇という光を見ていたんですねぇ」 これはちょっとショックでした。暗闇という光…。実際目を閉じても真っ暗なことってまずなく、それは私もこどもの頃から感じていました。しかしこのとらえ方、暗闇という光。そうか、あれも光だったんだ。
 これらは実際に盲目の方の言葉だそうで、作品に並々ならぬリアリティを与えています。やっぱり見えなくなってみないと見えないものもあるんですね。


 ところで、題名の「解夏」は「げげ」と読みます。その意味は劇中で説明されるように、禅宗の教えからくる言葉です。簡単に言うと夏の修行期間(「行(ぎょう)」の期間)が終わるって意味です。

 詳しく説明します。うざかったらこの段落は飛ばしてください。托鉢生活をする修行僧たちは夏の始まり、「結夏(けつげ)」と言うそうですけど、この時期になると説法しながら放浪することをやめ庵に集まったそうです。これはいのちの季節に歩き回って虫の卵や夏草などを踏み殺してはいけないという釈迦の教えに従ったものです。この夏のあいだ、僧たちは座禅をしながら共同生活をし、仏教の教えの根本である「行」について論議したり学びあったりしました。この共同生活は夏安居(げあんご)と呼ばれます。そして夏が終わりこの夏安吾を解くこと、それが「解夏」なんです。

 ここでは隆之の失明するという恐怖が「行」で、失明することが「解夏」。目が見えなくなるという恐怖は、目が見えなくなった瞬間になくなるんです。皮肉ですよね。でもその「行」があるから、私たちは悩み考え成長するんですよね。ラストシーン、隆之には希望すら感じます。なんとも気持ちの良い、ある種清々しいラストです。
 やがてスタッフロールがはじまり、さだまさしの「すろうらいふストーリー」が流れます。この曲は近年のさだまさしの楽曲の中でも絶品で、今後コンサートでも定番となるほどじゃないかというほどのデキだと思うんですけど、なんだかわからないが私もがんばろう!と思わされることうけあいです。名曲。

 もしオープニング主題歌としてこの曲流れてたら、もうそれだけで満足して帰ってたかも。って、帰るな。
 

「その日、すべてが消える。そして、始まる。」という副コピーのが好きですね。内容にもリンクしてますし。



長崎の風景が美しい映画という評判。



中学生のように初々しい愛を交わすふたりの中年。



日本映画は脇役が楽しみ。お母さん役は富司純子。さすがの演技。



印象的な黒田役には榎本明。



ともに隆之の幼なじみを演ずる古田新太(左)と田辺誠一(右)。良い感じ。



隆之に「解夏」にまつわる話をするキーマン・林は松村達雄さん。この写真だとなんかおばあちゃんみたい。


公式サイト:http://www.gege.jp/

解夏
cd:サントラ「解夏」
book:さだまさし「解夏」(原作)(文庫版)

cd:さだまさし「すろうらいふすとーりー」
  (「解夏」主題歌「たいせつなひと」収録)
amazon.co.jp
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